公開日:2025/5/23
著者:田村好史先生 順天堂大学大学院医学研究科 スポーツ医学・スポートロジー 代謝内分泌内科学 教授
「食べなさすぎ」による体調不良=低栄養が、若い女性から高齢者まで幅広い世代で問題になっています。
低栄養とは、健康を保つために必要なエネルギーや栄養素が不足している状態を指します。エネルギーが足りなければ体重が減り、体格指数(BMI)が18.5未満になると「やせ」とされ、栄養不足のリスクが高いと考えられます。
では、実際にどれくらいの人が当てはまるのでしょうか?厚生労働省「国民健康・栄養調査(2023年)」によると、20代女性の約20%がBMI18.5未満のやせに該当します。さらに、30代以降の女性にも依然としてやせている人が多く、必要なカロリーを摂れていないケースが少なくありません。その背景には、強いやせ志向や「太りたくない」という気持ちがあり、1日あたりのエネルギー摂取量が不足している人が多いのです。
エネルギーだけでなく、栄養素の不足も見逃せません。たとえばビタミンB群や鉄、カルシウム、ビタミンD、たんぱく質などは、現代女性が特に不足しがちな栄養素です。研究によると、見た目には健康そうでも「隠れ低栄養」状態にある人が多いとされています。
では、どう気づけばよいのでしょうか?「疲れやすい」「肌が荒れやすい」「生理が不規則」などの症状があれば、栄養不足が関係しているかもしれません。また、骨密度の低下、貧血、筋肉量の減少も低栄養のサインです。放っておくと、将来的な健康リスクにもつながります。
このような低栄養は、日常の食べ方のクセや無意識のカロリー制限から始まります。無理なダイエットや、サラダだけの食事、菓子パンや飲料で済ませる習慣など、思い当たることはありませんか?
まずは1日3食をきちんと食べ、主食・主菜・副菜をそろえることが大切です。あなたの「なんとなく不調」は、食生活の見直しで変わるかもしれません。今こそ、自分の体と向き合い、「本当に必要な栄養」を届けてあげましょう。